今の上司と1on1ミーティングしたくないあなたへ

ファシリテーション力をつければ、1on1を100倍 有意義にできる

規則だから定期的に上司と1on1ミーティングをしているけど、正直、今の上司との会話はできるだけ避けたい、なんて思っている方もいるのではないでしょうか。

「なんだかんだ、上司が一方的に話して来るんでしょ」

「キャリアのこととか色々話せる機会だと思ってたけど、結局、売上の話とか直近の業務のことばかり」

「上司に話すより、親しい先輩とか同期とかと話した方がよっぽど参考になる」

「業務報告以外に何の話をしていいかわからない」

なんて声を時々耳にします。

これでは、せっかくお互いに貴重な時間をとっているのにもったいないです。今回は、そんな1on1ミーティングに悩める方に、どうしたら1on1を100倍(…くらいものすごく!)有意義にできるか、秘訣をお伝えしたいと思います。

1.他愛のない話ほど意味がある

僕は現在の会社、プロノイア・グループでは、毎週 1 日、一人 1 時間ずつ時間をとって、チームメンバーと1対1のミーティング(1on1)を行なっています。

話す内容は、基本的にはチームメンバーにお任せです。

資料作成についてのアドバイスを求める人もいれば、キャリアの話をする人もいますし、プライベートな話や世間話で終わる人もいます。

最低限話しておくのは、

・仕事の進捗

・今週何をしたいと思っているか

・その仕事が予定通り終わっていない場合は、その理由

・今、必要な支援はなにか

ということくらいです。

そんなことをしたら 1 日潰れてしまうと思う方もいるかもしれませんが、週に 1 回、その日のために準備して話をしていれば、他の日に上司の時間を何度もとって相談しなければいけないことは、少なくなります。それこそ、自分のすべき仕事に集中する時間が増えるわけです。

週に1時間、平等に自分の話を何でも聞いてくれる日があり、その時にサポートを受けることができるのであれば、他の日はより集中して仕事に取り組めます。かしこまって難しい話や仕事のことを一生懸命話す必要はありません。打ち合わせコーナーである必要もありません。コーヒーを一緒に買いに行きながら、でもいいのです。ちょっとした会話の機会があるだけで上司も、「一体何を考えているのかわからない」なんて不安感がなくなり、普段のコミュニケーションもスムーズになります。

ですから、他愛のない話こそ大事なのです。

僕から言わせれば、

「何で早く言わないんだ」

「そんなこともできないのか」

なんて言葉が上司から出てくるのは、マネジメントができていない証拠です。でも、それは上司のマネジメントスキルの問題ではなく、週 1 で 1 対 1 で話す機会をつくればいいだけのことです。 1on1で伝えるべきポイントをあげておきます。

プロセスを伝える

成果が重要といっても、それは成果さえ出せば、時間をいくらかけてもいいということではありません。1on1の中で、現状のプロセスを伝え、どこにボトルネックがあるのか、どんな解決方法があるのかを上司に聞いてみましょう。

見込む結果を伝える

何をいつまでに、どのくらいのクオリティでアウトプットするのか、その効果をどのくらい見込むのか、を伝えます。見込む結果が明確でないままでは、早く結果を出せとか、残業を減らせとなってしまい、お互いに不毛なエネルギーを会話に費やすことになるわけです。

一緒に問題を解決して欲しいと、支援を明確にすることで、信頼感は醸成されます。いいメンバーがいれば、マネージャーも成長できるのです。

2.上手に自己開示するための質問力

相手にうまく自己開示してもらうには、「いい質問」をすることが欠かせません。

質問には、「時間をムダにする質問」と「人生を変える質問」の 2 種類があります。自己開示してもらうには、後者の質問をうまく積み重ねていくことが欠かせません。

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たとえば、外部の仕事相手が自分の提案をまったく聞いてくれないと悩んでいる人がいたら、「つまり相手にもっと自分の提案を尊重してほしいということですね?」「その提案をすることで、仕事や相手との関係がどうなると思いますか?」「提案を受け入れてもらうために何か試しましたか?」「もししていないのなら、今、何ができますか?」と建設的にしていく。最終的には相手に「◯◯してください」と具体的に依頼できる内容が見えてくるまで質問を繰り返します。つまり、質問された相手が〝自分はどんな信念や価値観に基づいて動いていて、どんな状態を理想としているか〞、自分自身が気づく質問が大事なのです。

対して「時間をムダにする質問」とは、往々にしてファクトベースで「正しい答え」を求めます。たとえば、「プレゼンできた?」とか、「お客さんに電話で話した?」で終わってしまうというようなものです。

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相手に自己開示させることが上手な人は、会話を通じて、相手にギフトを渡しています。相手が質問に答えようとすることで、「自分は何をしようとしていて、これから何をしたらいいのか」に気づけますから。「いい質問」をする人は信頼できますし、また相談しようと思えます。

1on1でも同じことです。ひたすらに上司に言われた仕事をやり続けるのではなく、たまには思い切って「なぜその仕事が必要なのですか」「その仕事はどんなことにつながるのですか」「その仕事を通じて自分に期待することはなんですか」など、聞いてみましょう。上司のその仕事にかける思い(ポジティブ、ネガティブ両面で)や、考え方が伝わってくると思います。一歩踏み込んで質問してみることで、意外にも上司は自己開示をしてくれる可能性があるのです。

3.1on1をファシリテートするのは部下の役割

通常であれば、1on1をどうやって進めたらいいか悩む上司の方が取るべき対策はたくさんあると思われがちです。ですが、あえて今回、部下である方の立場に立って1on1のポイントを記載したのにはわけがあります。

よく言われる、「1on1は人事面談のように上司が一方的に評価や指導を伝えるのとは逆であり、部下のための時間である」という考え方ですが、これの意味とは、部下が1on1をいかにファシリテートして、お互いにとって有意義な時間にできるかどうか、ということです。ですから、部下の方は受け身になることなく、1on1をチャンスと捉えていただきたいです。

ファシリテートというと会議マネジメントのようで堅苦しい印象がありますが、いたってシンプルです。

ゴールを設定する

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ただなんとなく話したいことをアジェンダにするのではなく、この1on1が終わった時点でどんな状態を作りたいのかをイメージしてみましょう。ある案件に関しての解決策が明確になっている、でもいいし、プライベートな悩みを伝えて心のストレスを軽くしたいでもいいです。

ゴールの設定には大きく4つあります。ゴールを設定するためには、「何を得たいのか」を言語化するところからはじめましょう。

①意思決定(決める)

客観的なデータや事実関係に基づいて、明確な結論を出すこと。複数の選択肢から、結論を選ぶ作業が必要になります。

②アイデア出し(生み出す)

サービスやプロダクト、企画についてアイデアを募ること。意思決定が選択肢を減らすプロセスならば、アイデア出しは選択肢を増やすプロセスです。

③情報共有(伝える)

事実や考えを伝え、お互いの納得感を醸成し、動いてもらうことです。人間は感情に基づいて動く生き物ですから、決まったことを無条件に実行できるわけではありません。プライベートな話も含めて、今の状態を伝え、感情をリリースすることで、落ち着いて仕事に入ることができるのです。

④チームビルディング(つながる)

これは、日本の職場ではあまりファシリテーションのゴールと見なされないかもしれません。同じ目的やゴールを共有していても、メンバー同士は違う人間ですから、そこには常に感情レベルの葛藤が生まれるリスクがあります。上司と部下の間でも同じです。この葛藤をマネジメントするのに大切なのが、メンバー同士の信頼関係です。一見遠回りなように聞こえるかもしれませんが、チームビルディングができていない上司部下では、些細な感情レベルの葛藤が仕事のパフォーマンスを下げたり、その解決のために余計な時間を必要になったりと悪循環を生みます。

今、あなたが設定しようとしている1on1は、この4つのうちのどれなのか、すぐに答えられますか?ゴールが明確になれば、それに応じた適切な1on1の進め方、環境づくりは、すべて逆算可能です。

いかがでしたか?ポイントは、部下であるから会話に受け身になるのではなく、1on1ミーティングにおいては「自分から動く」ということです。”assume positive intention” とは、「どんな行動にもその人なりに、なんらかのポジティブな意図がある」という意味の言葉です。

企業で働いていれば、周りの人や上司が自分の思った通りに動いてくれない、なんてことはいたって普通です。僕だって、とっさに感情的になってしまったことが何度もありました。「なんでいつも愚痴ってばかりで変えようとしないんだ」「『ああしろ、こうしろ』と上司が上から物を言ってばかりで何もやらないことに腹がたつ」…言い出すとキリがありません。

けれども、その人の心の奥底に潜む「本当の意図」は何なのか。目の前の上司が何を手に入れたくて、何を手放したくないのかを理解すること。少なくとも「理解しよう」とすることが大事です。またその逆も然りで、自分自身の本当の意図を、きちんと上司に伝えられているか。その姿勢が、仕事を建設的に進め、自体を少しでも好転させるきっかけになるはずです。

例えば、いつも言っていることがコロコロ変わる上司だって、会社全体の中で板挟みにあい、「上司の上司」のリクエストを丁寧に叶えようとしているだけのこともあります。子供がいて、とにもかくにも社内での安定的な地位を確保しようと必死なのかもしれません。

誰かにとって「思い通りにいかない」行動の裏には必ず何かしらの理由があるし、何かを必死になって解決しようとしているのです。そこを理解しようとせずに正論をぶつけるのは簡単です。でも、それでは相手は「攻撃されている」「自分は信頼されていないんだな」と殻に閉じこもってしまうばかりです。

そうではなく、常に、”assume positive intention” の精神で、相手にとって、上司にとっての前向きな意図を探そうとすれば、仮に感情レベルの葛藤が生まれることがあっても、建設的なコミュニケーションにリードできるはずです。それとも、上司を一度ランチに誘ってみて、普段は話さないようなことを話してみるのもいいかもしれませんね!

Twitter/Facebook: @piotrgrzywacz

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